やけあ〜と(Yake-art)

Yukko

やけあ〜と(Yake-art)
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第5回 < 検証 >



無事鎮火後、消防車は戻って行ったけれど、

午後から再び消防署と警察、

そして多分消防団の人たちも含んでの

検証が2度ありました。

両方とも最後に呼ばれ、

私1人が立ち合いました。

それまでとはまるで違う変わり果てた部屋に、

火事の後、初めて足を踏み入れました。

一応鎮火したものの、

上から割れた瓦が落ちてきたり

床が抜け落ちたり…

とかなり危険だから入らない様に

言われていたので、呼ばれるまでは

瓦礫の山がそびえる庭から見上げていただけでした。

想像はしていたものの、

あまりにも無惨な状態を目の前に、

ちょっと唖然としてしまいました。

10人位のオール男性が円陣に似た形で、

出火した八畳の焼け跡に立っていました。

火元(だろう)近くに呼ばれ、

罰の悪い心地で中程まで進みました。

本来なら彼等に対して、

きちんと挨拶をせねばならないのに、

唖然としてしまった事と罰の悪さも含め、

「ども、この度はスイマセン…」

とペコンとお辞儀しただけでした…。

罰が悪いのには3つの理由がありました。

1つ目は…、

不注意で火事を出し、周りを騒がせ、大勢の人に

多大なる迷惑をかけた張本人がこの私であること。

2つ目は…、

他人様には絶対に見せられない状態だった部屋が、

燃えてしまったとは言え、そのハチャメチャな状態が

こんなにも公に暴露されてしまったこと。

3つ目は…、

まわりは総て男性なのに、ノーメイク…

どころか顔もろくに洗っておらず、髪はバサバサ、

着ている物は殆ど寝巻に近い状態のひどい有様だったこと。

オシャレ度…0%

ブス度…100%

誰もそんなところに注目などしない事は

よ〜く分かっていたけれど、

やはりちょっと恥ずかしかった…。

私にとっては初めて(2度といらない!)の経験だけれど、

彼等にとっては常のお仕事だし、

早く済ませて戻ろうとしか思ってなかったでしょうね。



検証の結果としては、私が自信を持って(?)言ったように、

ベッド脇のクリップ式スポットライトがあった辺りが

最もよく燃えていたので、

多分出火原因はそのライトだろう…との事でした。

長時間調査しても、

私が何度もその原因を強く主張しても、

断定はしない(あるいは出来ない?)のダ…と

ちょっと意外でした。

出火原因については何度も“だろう”と言うので、

私は何度か

“です!”

とその度に訂正したけれど、

彼等は最後まで

“だろう”

としか言わなかった。



第1回目の検証では、ライトのあった高さを聞かれ、

それをクリップで留めていた、

今は焼け焦げてしまっている柱に近寄り、

目を瞑って思い出し、出来るだけ正確に答えるのに努めました。

「この辺り…」と言うと、

グチャグチャに残骸が散乱している床からメジャーで寸法を測り、

用紙に記入していました。

素人目からは、他の部分と同じように燃えてしまっている

その柱を測ったところで何が明確になるのか疑問でした。

次に、床のあちこちに燃えて溶けてモコッと固まりに

なっているモノが何であったのか…とか、

部屋にあったその他色々な物はどういう物で、

どこにあったかを尋ねられました。

大体は答えられるのですが、

キチンと説明すればするほど、いかに物が多くて

雑然としていたかを自分から暴露しているみたいなので、

必要以上は答えずにおきました…。

大事な物がどうなっているか調べたかったけれど、

第2回目の検証の立ち合いもあるし、

何より検証中は殺人現場じゃないけれど、

触ってはいけないものと思い込んでいたので、

質問が終わるとすぐに母屋に退きました。

『アレコレ物色すれば良かった…』

後ですご〜く後悔しました。



第2回目の検証では、床に敷いてあった

電気カーペットと壁際の家具類以外の物は総て排除され、

床には何もありませんでした。

『何とすっかりキレイに取り払われたこと…』

が、第1印象でした。

壁際に置いていた本棚の下部は焼け残り、

そこにあった雑誌やアルバムの外側は黒く焦げては

いたけれど、元あった状態に似た形でありました。

木製の引出類は表面は炭状態でしたが、

中のモノは燃えてはいませんでした。

電気の配線は重要らしく、

主にそれらについて色々尋ねられました。

大抵は覚えていましたが、

すぐには答えられないこともありました。

壊れて機能しなくなったためコード部分を切り取り、

ただの敷物と化した元電気カーペット。

その上に沢山の物を置き、

姿が見えず存在を忘れてしまっていたのです。

上にあった物たちは燃えて無くなり、

そのカーペットだけが無惨な形で久しぶりに

姿を現していました。

その配線はどうなっていたかを聞かれ、

『…へっ?』

アレコレ思い巡らし、

やっとその存在を思い出しました。

少し間がありましたが、忘れてしまっていた事を 悟られないように答えました。

でも、いくら取り繕って答えても1人芝居って

感じだったかも知れません。

床のあちこちに物を置き、これじゃ歩くスペースが

無いのは一目瞭然でしたもんね…。



検証も終わり母屋に戻ろうとした時、

1人がベランダ近くの床に散乱していた

数個の百円玉や十円玉を見つけ、拾うよう促しました。

言われるまま、これも貴重なお金…と拾いました。

拾いながら、部屋の中央の固まりがあった所を指差し

「あそこに大金があったんだけど…」

かなりガックリして言いました。

すると、「え〜!」と、とても驚いた様子で

「あの辺りのモノは先程下に落としたから、後で調べてごらん!」

と軽い口調で言われました。

『…!!』



消防署の人たちには、

それまで感謝と陳謝の気持ちしかなかったのですが、

それ以後、別の思いが湧いてきたのでした…。






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