やけあ〜と(Yake-art)

Yukko




第3回 < 消火 >



『これは本当に現実なんだろうか…!?』

ほんの数時間前はそれまでと変わらぬ生活だったし、

このまま続いて当たり前と思っていたのに…。



外に避難してすぐは、まだ何故火が出たのか見当が

つきませんでした。暫くして、

『あっ…!』

うたた寝前に脳裏をよぎった事を思い出しました。

ここ何年か整理整頓を怠っていたグータラな私に、

きっと神様が“喝”を入れたのダ…と思えました。

部屋の中の持ち物に関しては、

『燃えてしまったんだわ…』

と漠然と思うだけで具体的には何も浮かびませんでし

た。それよりも

『大変な事をしでかした…』

と犯罪者にでもなったような思いでいっぱいでした。

大勢の人に少し興奮気味の犬をなだめながら私の方が

癒されていました。犬の顔に私の顔を擦り寄せ、多少

なりとも精神的に落ち着く自分を感じました。



消防署の人が色々質問をしてきました。

まず…名前・住所・電話番号と家族構成を聞かれ、燃

えている部屋の間取りやその時の様子を尋ねられまし

た。それと同時にタバコの事を聞かれ“吸う”と答え

たら急に声が高くなり、どのあたりで吸ったかを何度

も確認してきました。

タバコは直接的“火”なので普段からけっこう気をつ

けているのです。なのにまるでそのせいと言わんばか

りに聞いてくるのでちょっとムッとし、原因はタバコ

ではない!と必死で強調しました。

原因がベッド脇のライトであるのは十中八九間違いな

いと確信出来たし、ましてや喫煙する者としては一時

でも“タバコが原因”と疑われるのさえ、絶対にイヤ

だったのです!



私が話す部屋の様子を聞きながら用紙に間取り図を描

いているのを見ていて少しイライラしました。

だって…メチャ下手なんです!

私は一応美術系の学校卒。決して上手ではないけれど

その人よりはマシでした。

「描きましょかぁ〜?」

と言うとその人はやはり絵は苦手だと見え、

助かる〜!とばかりに私に用紙を渡しました。

犬をしっかり持っててくれるよう頼み、昔間取り図を

見たり描いたりするのが好きだったナ…と思いながら

得意になって描き出しました。

上から見た図だと高さが分からないとの事で、次に遠

近法で部屋の状態を説明しながらササッと描いてみせ

ました。

「上手いねぇ〜」

と言われ、ちょっと嬉しくなり何やら楽しい気分にな

っている自分に気がつき、

『こんな時に私は何を喜んでいるのダ!』

と自分を諫めました。

ひと通り説明と図も描き終えて、気になる消火活動を

見ようと目をやると、すぐまた別の人が同じ事を聞い

てきました。

…結局、消防署・警察・消防団・市役所の人と思われ

る4人に同じような内容を繰り返し、すっかり疲れ果

てました。



冬場の早朝は寒く、興奮状態とは言え身体は冷えてお

りました。普段はうたた寝から覚めたらトイレに行き

その後本格的にベッドで寝直すのが常でしたが、トイ

レに行きたい事などブッ飛ぶ事態が起きたため行けず

じまい…。身体の自然現象は時を選ばず、急に凄く行

きたくなりました。で、消防士に一応ことわってから

火事現場のすぐ傍にある母屋のトイレへ。土足で上が

るのはイヤな気がしたけれど緊急時だしね…。

トイレの窓は磨りガラスで、閉めてあったのだけれど

外が赤々としているのがよくわかりました。



……クライマックスも過ぎてようやく鎮火し、気がつ

けば近所の人たちも殆ど居なくなっていました。

考えたら、私は燃えている家の様子や消火活動を殆ど

見守る事が出来ませんでした。

防火服を着た数人の消防士が母屋の屋根に居たのと、

炎が屋根を突き抜け真っ直ぐに上がっていた場面を覚

えているくらい。



再度燃え出さないかを監視するため、消防団と思われ

る人たちが5〜6人残っていて、道端で立ち話しなが

ら用意してきた暖かい飲み物を飲んでいました。

異常に周りの事を気にするもう1人の住人が、その人

たちにお茶や食べ物等を用意すべきか悩んでおりまし

た。後で分かったのですが、第2話<大惨事>の中で

“通報後もう1人の住人が現場から姿を消していた”

のは近所に火事を知らせるため、外に出て“小声”で

叫んでいたらしいです…。

消防車のサイレンで十分効果あり、

他にすべき事があったのではと私は思うのですが…。


やけアート やけアート やけアート やけアート
やけアート やけアート やけアート やけアート
「やけ跡?やけアート?(紙)」
*クリックすると大きい画像をご覧いただけます。


ホームへ
*** バックナンバー ***
2005年 5月第1回「プロローグ」
6月第2回「大惨事」
7月第3回「消火」
8月第4回「鎮火後」
9月第5回「検証」
10月第6回「幸運」
11月第7回「整理整頓」
12月第8回「後片付け」
ページのTOPに戻る