奮闘記 in KOLKATA




生まれと過去がどうであれ
カリガート in プレムダン、男性の新患さんが急増中。
間借りゆえスペースに限界があり、女性の患者さんを大幅に減らして対応。
多くがプレムダンに移されて重症者のみ別部屋で介護することになったのだ。
現在工事中のカリガートでは、ボランティアの介護が男性は男性の患者を、
女性は女性の患者をと厳密に分けられていたのだが、今は否応なく女性も
シャワーや下の世話を除いて男性のお世話もしている。
弱っていて嚥下出来ない人の流動食など、
特別食(?)担当の私は、男性病棟に居る時間が長くなり、
患者さん同志の微妙な上下関係を知ることとなった。
そのキーは、出自つまり世襲職業カーストである。
上位カーストかどうかは、英語力やサーネーム、
そして風貌(肌の色など)によってある程度察しがつく。

手の指を3本失くして治療中のナレンドラは恐ろしく博学で、
世界情勢などを喋りまくっている。
そして度々「私はブラーマン(最高位である僧侶カースト)なのだ」と
主張することを忘れない。
大学卒業後、「こいつは少し気がふれている」と家族が精神病院へ送り込んだらしい。
その彼をして頭が上らないのが足の不自由なサミルである。
歩けないサミルはナレンドラに「水を持ってこい」とか何かと言いつける。
かなりの高等教育を受けているらしく英語も堪能である。
決して尊大な態度をとったりしないが、“自分は他とは違う”意識が見え隠れする。
さらにユニークなのは、元教授だったらしいタルン、
シスターから貰うのかいつも新聞や雑誌を読んでいる。
彼らがどういう経緯でカリガートに運び込まれたか、
男性側の事情はまだよくは知らない。
ただ、面倒をみる家族がいるならばここに収容しないから、
何らかの事情で見放され、路上か駅でピックアップされたのは間違いない。

下位カーストあるいはアウトカーストで
貧しいゆえに見捨てられた他の患者さんと今は同じ立場なのだ。
生まれと過去がどうであれ。傷や病が癒えたとき、
他の施設行きか、ピックアップした場所に戻されるのか、まだ分からない。
仮に出ても彼らが働ける場所は恐らくない。
物乞いもできないだろう。さらにもう一人、
風貌から明らかに生まれは悪くない40歳くらいの男性がいる。
ハウラー駅で糞尿まみれだったのを、日本人ボランティアが連れて来た。
脳溢血か何かで倒れたのか、頭に新しい手術あとがあった。
そして右半身不随と言語障害が残っていた。
どうも英語とヒンドゥー語が理解できるようで、
話しかけると応えようと口を動かし、ハンサムな笑顔も返してくれる。
食事前には手を洗いたいとの手振りを見せもする。
毎日ボランティアが足をマッサージしているが、果たして機能回復するかどうか。
仮に仮に、言語も記憶も戻ったとしても、
多分見放したのであろう家族のことが分かるのか、戻れるのか、今は全く見当がつかない。
彼らの行く末に大変興味がある。



ボランティアさまざま
縫物屋さんのマリエラがイタリアから今年もやって来てくれた。
お友達のカルメンとともに。2台のミシンも寄贈してくれた。
彼女が来るたびに、患者さんの衣類(寝間着)を新しく作ってくれ
(綿生地はハンセン氏病施設で織られたもの)、破れの補修をしてくれる。
大変有難い貴重なボランティアである。
今回は2週間の滞在、あとは世界中にあるマザーの施設を回っているらしい。
技術を活かして。残念なのは、インドで手に入る縫い糸がお粗末なこと、
綿製品の輸出も盛んなわりには“耐久性”をさほど重視しないお国柄ゆえ?
次に帰省の折には日本から沢山持ってこよう。
貧しい人の為の施設にはまったく珍しいインド人ボランティア、
ビンデルの最近の活躍がめざましい。
洗濯や患者さんのシャワー介助が専門(?)なのだが、
ここしばらくはナース不足でてんてこ舞いのシスターをサポートして
創傷治療まで手伝っている。



マリエラ(右)とカルメン


ヒンドゥー教義からすると、人の死・血・汚物・膿など
不浄とされるものに関わるのは大抵アウトカーストの仕事(医者を除く)、
従って我々ボランティアもアウトカーストなのである。
ビンデルがそんなワークを厭わずやってくれるのは、
彼がシーク教徒であるからとも言える。
今のインドのシン首相もシーク教徒、頭にターバンを巻いているのでそれと分かる。
シーク教はイスラム教と同様、偶像崇拝やカーストを完全否定していて、
唯一絶対神の前では人間皆平等と説く。
ヒンドゥー教徒のリッチな人々が度々カリガートの患者さんに寄付はしても、
“見ても触れても穢れる”とされるアウトカースト(不可触民)の
病んだ人達のために自らボランティアワークするのはあり得ないが、
ビンデルにはそんなためらいは無用なのである。
患者さんにとってほんとに嬉しいインド人に違いない。
リッチな社長さんらしいが、自分が居なくとも会社は回るとか。
息子二人も奥さんもアメリカがお気に入りで、留守を一人で気楽にというところ。
私にとっても、何でも話し合えるよき仲間である。




ビンデルと、夏休みを利用して
ボランティア体験している従妹




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