プジャ狂騒の陰で

雨期も終り、10月も半ばを過ぎたのに今年は暑さが抜けない。
昼間はまだ30℃を超え夜も天井のファンは回りっぱなし、
北極の氷も解け始めてるという地球温暖化のせい?


パンダルの外の彫像と月

自然の熱気をさらにヒートアツプした感のドゥルガプジャ(5〜9日)、
2年ぶりに見たコルカタの狂騒はますます商業主義化へ突き進んでいた。
町内(クラブ)ごとに建てられたパンダル(仮設神殿)の周りは
大抵デカイ広告看板のオンパレード。
“スポンサーあっての祭り”なのだ。
「時間・金・エネルギーの無駄遣い、利己主義の象徴だ」と
毛嫌いする批評家も居るにはいるが、ベンガル人の身体には
“ドゥルガプドャなくして人生なし”
かのごとく遺伝子が組み込まれているのだ、きっと。


イルミネーションを載せたリヤカーを引くリキシャラー

人々は一張羅をまとい夜を徹して5日間人気パンダルを見て回る。
祭り前のネット接続不良は何度連絡しても一週間放ったらかし、
予告なしの停電毎日(全パンダルが煌々とライティングするのだから
電力消費は半端じゃない)、散乱するゴミ、‥‥私にはいい迷惑でも、
ベンガル人には“ドゥルガプジャだから”何でもOK。
私も近場だけ見て歩いたが、どうも今年のドゥルガプジャ鑑賞は、
正面よりも横・後ろ・周辺などなど、斜(はす)に構え気味だったようだ。
一ヶ月半前から始まったパンダルの建設場では、
出稼ぎらしき人夫がその作業場で寝泊まりしているのをよく見かけた。
パンダルの骨組になる長い竹材や木切れを山積みにした
リヤカーをリキシャラーが裸足で引いていた。


両面太鼓ダッカのドラマー

ドゥルガプジャに欠かせぬ激しいビートリズムを
両面太鼓(ダッカ)で踊り打つドラマーも、
ドゥルガ神をフーグリ川に沈めに行くパレードで
巨大なイルミネーションをリヤカーにのせ自転車で引いているのも、
その後ろで発電機を載せたリヤカーを押しているのも、
祭りの毎朝ゴミ箱状態の道路を掃いているのも、
狂騒のあとのパンダルを解体して延々と資材を整理しているのも、
みんなみんな下層カーストの人達である。
この人たちの労なくしてドゥルガプジャは成り立たない。
人々の狂宴は始まらない。
プジャ初日の朝、ニルマル・ヒルダイの玄関から
白い布にくるまれたビジュが運び出された。
MCの救急車に乗せられ火葬場へと向かった。
「ビジュ、ビジュ」と呼びかけ見送った。
恐らく肝硬変か何かであったのだろう、
いっとき症状がよくなり我儘ばかりいうので出されたのだが、
シスターの予言どおり舞い戻って来たときにはすでに最悪で、
食べる力もなく2日後に召された。
むくんだ顔にもうあのギョロ目をひらくことはなかった。
40年足らずの一生で、プジャの“ハレ”を
誰かと騒ぎ楽しんだ思いがあっただろうか。


プジャの朝、ニルマル・ヒルダイの外

unknown

名前も年齢もunknown(不祥)、ニルマル・ヒルダイでは珍しくない。
出生届けも何もなしに育ったか、
知らされないまま親と生き別れたか捨てられたか、
真偽は分からないが、何度尋ねても答えないケースは結構ある。
名前が分かる限りはきちんと名前で呼びかけてあげたい、
という訳で最近やっとベッドNo.の横に名札を貼るようになった。
毎日ワーカーが、段差のあるベッド回りの床をホースの水で洗うため、
紙の名札を貼るわけにはいかない。
何かいい方法がないかと買い物のつど文具店を見たりしていて
やっと見つけたのが、ジッパー付きの小さなビニールケース。
9×13cmほどで丁度いいサイズ。
これに名札を入れジッパーを下にして貼っておけば掃除にも耐えられ、
患者さんの入れ替わり時はカードだけ差し替えればいい。
こうなると目立つのが名札のない患者さんである。
症状が落ち着いてから何度も聞き直す。
やっと口をひらいたある患者が答えたのは“ (俗に)気違い”の意の言葉。
きっと周りからそう呼ばれ続け、自分の名前は“気違い”なんだと
無意識に思いこんでいたのだろう。
そこで私は、数少ないヒンディー語のボキャブラリーから
Mita(友達)を思い出して名札を作った。
そして「貴女の名前はMita」と繰り返し、
「私の名前はMita」と言わせた。
ところが数日後出されることになり、
「貴女の名前はMita、OK?」と何度も言って別れた。
彼女は自分の名前を主張しているだろうか。


Mitaの名札

それでも懲りずに

ボランティアのあいだで今年目立つのがデング熱。
ことに安宿街にステイしている日本人は相次いで感染し入院した。
昼間の蚊(ネッタイシマカ)が媒介するウイルスによるもので、
頭痛・関節痛・発疹などを伴なうが一過性であり、
対症療法により2週間もすれば完治する。
しかし慣れぬ土地で感染症に罹り入院となると、
言葉の問題やらで不安になるのは当然。
ニルマル・ヒルダイでボランティアしてくれている日本人の場合は、
出来る限り私がフォローしている。
ベテラン組が懇意にしている医師に診察を受けてから
紹介される病院はほとんど、リッチ層しか縁のない大病院。
保険に入っている旅行者に手厚過ぎるcareをしてくれる。
野戦病院のごとき政府系病院だと2Rs.で診察が受けられるのに比し、
今見舞いに通っている病院では入院時必要な手付金が10,000Rs.。
リッチ層は民間の医療保険に入っていて高額治療費でも
還ってくるから快適かつ最新の治療が受けられるという次第。
見舞う人たちの身なりも様子も全く違うし、院内の清潔度、
ナースの対応も、インドではないみたい(失礼)。
もちろん入院などせずに済めばいいのだが、
どうしても罹患する確率が高いのがインド・コルカタといえよう。
マラリア、A型肝炎、結核、腸チフス、その他原因不明の発熱下痢
‥‥防ぎようがない訳ではないが、体調や免疫力の個人差、
油断もあったりして、ボランティアも常に誰かがダウンしている。
それでもみんなコルカタへ、何度も。

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