笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER

ピンポーン♪

「ハーイ。今、行きます」

毎月2回、浅河さんは、近くの北並さんと一緒に、
自転車で5分の所の書道塾に通っています。
二人は初老の女性で、いつもこの日を楽しみにして、
雨が降っても、風が吹いても、せっせと通っています。
もう3年になって、すっかり生活の一部になっています。

この日も、一通りの練習の後で、恒例のミニ茶話会になりました。
みんな、持ち寄ったお菓子をつまみながら、他愛のない世間話をするのは、
この上なく楽しくて、誰もなかなか帰ろうとしません。

でも、今日は、浅河さんが少し真面目そうな顔をして、
紙袋から折りたたんだ半紙を取り出して、机の上で丁寧に伸ばしました。

「なんですか、それ?」

「ハハハ、これはね、うちの守り本尊なんです」

「エェッ! 全然わかんない」

「いや、あのね、去年はずっと不景気だったでしょう」

「ほんと。国じゃ都合のいい話ばかりしてたけど、うちも苦しかったもんね」

「それでね、年末に、何かこれからの参考になる本がないかと思って、
古本屋まで回ってみたの。
そしたら、作家の森まゆみさんの「貧楽暮らし」って本を見つけたんです。
物語はね、作者自身が、貧乏でも楽しく生き抜くために、“貧楽”という言葉を創り出して、
何かあると“貧楽”、“貧楽”と唱えて頑張ったって話なの」


「ヘェー。参考になるわね。立派ですね」

「それで家の者に話したら、中学生の娘が、
これ以上貧乏になるような言葉は嫌だっていうのよ。
意味が解ってないようだけど、じゃあ、これからの人生の羅針盤になるような言葉を、
お父さんも一緒に考えようってことにして、出来たのが、この“生楽”です」


「フーン。意味は?」

「これは、楽して生きるって意味ではありません。
生きてる限りは、なにがあっても、前向きに考えて、それを楽しみにしてしまおう、
人生を強く楽しく生きようっていう意味を持たせてあるんです」


パチパチパチ

「まぁまぁ、今日は浅河さんの演説会になりましたね。
とてもいいお話でした。
字もしっかり書けていますよ。
私たちも、“生楽”を合言葉に、しっかり生きましょうよ」



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