笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER

「この角の業務用食品スーパーが、つい最近つぶれましたね。
わずか7年でと、聞いてますが」


「ああ、気の毒ですね。だけど、考えてみりゃ、
ここらの1キロ四方ほどの狭いエリアで、
ドラッグストアや花屋や、ハンバーガーチェーン店なんか、
3軒もバタバタいってますよね」


「そう云われてみると、すごいことですね。
まるで、「蛍の光」五重奏ってとこですね」


「でも、笑い事じゃないんですよ。
実は、私の家内が駅前でやっていた用品店が、
20年前に倒産しているんです」


「エッ、そんなこと全く知りませんでした―――。
でも、大変だったでしょう。それでどうされたんですか」


「家内も私も、かなりの借金背負って、がっくりしてしまいましてね。
結局、店と土地を売り払って、こちらの方に引っ越したってわけですよ。
当時中学生だった息子や娘は、商売の怖さが身に沁みたらしく、
今は、大手自動車メーカーの技術者や市役所の職員になってますよ。ハハハ」


「そうでしたかぁ。
でも、お子さんの教育やご自身の生活などを賄うために、
今のケーキ屋さんを始められたんですか。
よく、頑張れたもんですね」


「そうですねぇーーー。
毎日毎日、落ち込んでばかりでは、どうしようもないと思って、
ある日、みんなで、三瓶山の展望台でゲン直しをしようと云って、
連れ出したんです」


「それで」

「すごくいい天気で、はるか向うには富士山が見える絶景でしたねぇ。
今でもはっきり思い出しますーーー。
みんなで景色を楽しんだ後で、全員で富士山を見ながら、大笑いしようって云ったんです。
そしたら、怪訝な顔されましてね。
そんなァ、笑うことなんか無いよって云うんです」


「そりゃそうでしょうね。無理ですよね」

「いいや、ここで笑うのは、自分の弱い心を笑い飛ばす為だ。
心がすっきりしたら、絶対、元気が出て来るぞ。
わしがお手本示すぞ、いいか。
〜ワッハッハッハッハ
わしは家庭をしっかり守れなかった大馬鹿だ、意気地なしだ。
ワッハッハ〜
って、大声でやったんです。
そしたら、家内が、
〜アッハッハッハ
わたしも同じようなもん、アッハッハッハッハ〜
ってやったんです。
これが意外と面白く聞こえて、
子供らは、おいしいケーキも食べられない哀れな子ですとか、
海外旅行もダメになって悲しいなんて事を色々言って
笑い転げてました」


「思い切ったことをやられましたね」

「まぁ、終わってみれば、みんなすっきり晴れ晴れした気分でしたよ。
表情も生き生きしてました」


「それからケーキ屋さんの道へ入られたんですね。」

「エェ、ケーキはもともと大好きでしたし、
娘がそれを食べられないって笑い飛ばしているのを見て、
胸にグッと来るものがありましてね。
何が何でも成功してやろうって頑張ったんです」


「そうでしたかぁ―――。
どん底の時には、わだかまりを全部ぶちまけて、
心を洗ってから出直すことが大切なんですね。ホント。」


「そうです、そうです。アハハハハハ」



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