笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER
今日の土那君は、全く別人のようだった。
正に、果てしなく夢を追う夢追い人だったな。

       ―――――――

4月ともなれば、草木の息遣いもはっきりして来て、
天気の良い日には、なんとなく出歩きたくなる。

そんなある日、古い付き合いの土那君を、隣町に尋ねてみた。
見慣れた応接室に通された瞬間、今までと雰囲気が違うのに気付いた。

見れば、応接机に、デーンと奇妙な帆船がが乗っかってる。

「何だい、これ?」

「あぁ、これはな、おれに夢を運んでくれる船なんだ。
一応説明するとな、この帆にはでっかく「夢」の字が掲げてあるだろ。
まあ、夢船ってところかな。
その後ろにゃ、でっかいプロペラが付いていて、この風で前へ進む仕掛けさ」


「凄いな、こんなの見たことない」

「そりゃそうだろうよ。
おまけに、船にゃ、人もネズミも鶏も乗っていて、
それぞれに大夢小夢を追い求めて、仲良く航海している。
そしてな、後ろの方に、筒が2本と、赤玉、青玉が、いくつか転がってるだろう。
これはな、花打と打ち上げ筒なんだ。
誰かの夢が叶えられるたびに、花火が打ち上げられるという大仕掛けなんだ」


「そうかぁ。すごく面白いな。
それぞれ、夢が何であって、それが大海原で実現しようが、陸地で実現しようが、
そんな理屈はどうでもいいって気がしてくるな。
こりゃ大ロマンの塊だ。夢船だ」


「その通り。3か月かけて、一生懸命作り上げたんだ。」

       ―――――――

それから二人でコーヒーをすすりながら、一生の夢について、話が盛り上がった。

若い頃の夢は、出世とか金持ちとか社会的なものが多いが、
老境に入ると、病気を治したいとか、気楽に過ごしたいとか、身の回りのものが多くなる。

だが、大海原のど真ん中で描く夢は、爽やかで壮大なものだろう。
土那君は、この自作の置物を眺めながら、
自分も乗組員になりきって、夢そのものを楽しんでるんだろう。

そんな土那君の顔は、どこか仏性を感じさせた。

       ―――――――

土那君のように、純真な夢追い人の心境になれたらいいな。
自分も真似てみようか。
もっとも、サル真似したら、自分の場合には、
老人性夢見る人になって、痴ほう症と隣り合わせになるかもしれん。
ァッハハハハハハ。



▲このページのTOPへ