笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER
2月の空は、冷たく硬い。万物は凍てつき、動きも鈍い。

この中にあっても、熱い心で周りを溶きほぐすように、動き回る人達がいる。
桜田さんは2児の母親。二人とも、さわらび幼稚園にお世話になっている。

桜田さんは、上の子が今年、小学校に入学するのを機に、
お世話になった幼稚園に、何か、恩返しをしたいと思っていた。

たまたま、去年末の保育士懇談会の席上で、
「何か、お困りになっている事はありませんか」と尋ねてみた。

すると、いくつかの苦労話が出た中で、数々の消耗品の購入が、
間違いや手配ミスなどもあって、手を取られているという話に強く興味を引かれた。

少し前なら、いくつかの業者の御用聞きや配達サービスで、
それなりに処理できたが、今では高齢化と、不人気業務のせいで、
来てくれる人がいなくなってしまったとのこと。

そのことを聞いてから、桜田さんは、夫と一緒に、
1ヵ月かけて改善提案をまとめ上げた。

改善案の要点は次のようなものだった、
1、必要品の購入は、週に1回、まとめて行う。
2、一つの場所で賄えるように、大型スーパーと契約する。
3、運搬は、車輪付の小型ワゴンを、園児が曳いて園に持ってくる。

これを保護者の臨時総会で諮ったら、
予想通り、3の項目に質問や意見が集中した。

教育目的に照らして合理性があるか、安全対策はどうするか、
先生に今より負担がかかるのではないか、ワゴンの費用はどうするか等々。

その場で解決しなかった問題点は、桜田さんが関係先を回って一つづつ解決した。
特に、園児の活動が労役にあたるので好ましくないという考えには、
従来の園外活動や社会見学などの教育目的にも合うものだと説得した。

ワゴンは、スーパーが、軽い木箱に自転車の小径ホイールを取り付けて作ってくれた。
横には、黄色をバックに、緑色で{さわらび幼稚園}のロゴが鮮やかに描かれている。
赤と白に編み込まれた引き綱も付けてくれた。


さて、園内でちょっとした練習もして、いよいよ今日の本番の日を迎えた。

一人の先生がすでに買い付けに行っていて、終わり次第連絡をくれることになっている。

園では、このワゴンを、こどもみこしと名付けた。園児達は興味津々で、ワクワクしている

最初の参加者は、5歳、4歳、3歳の中から二人づつ抽選で選んだ。
それに当たった子たちは、飛び上がって喜んだ。

当選した園児は引き綱を握りしめて、今か今かとはしゃいでいる。
残りの園児も総出で、手を振って騒ぐ。
お母さん達も10人も集まっていて、ニコニコソワソワ。

遂に、連絡が来た。クラッカーが鳴った。

ここから700m離れたスーパーに出発進行!

  パチパチパチパチ 大拍手

先頭の先生が笛を吹いてリズムを取り、もう一人の先生が
ワゴンの把手を掴んで、真剣な表情で向きや速さを調節する。

その後に、お母さん達がゾロゾロと続く。

動き出してみると、車の少ない道を選んだことと、
行列が1本の綱にまとまっているので、
今までのバラバラ集団より、ずっと安全に感じられる。
それに、とても目立つので、遠くの車にも見えやすいだろう。


スーパーではテキパキと積みこまれ、
園児たちは、少し重たくなったみこしを曳いて、無事に園に辿り着いた。

園児たちは、力を合わせて、今までやったことのない大仕事に興奮して、
ヤッター、ヤッターの大喜び。

ついて回ったお母さん達もホッとした様子で大拍手。


桜田さんは、涙が出るほどの喜びと達成感に浸って、
よかった、ょかったと繰り返すばかり。

「櫻田さん、ご苦労様でした。
うまく行きそうです、これからもよろしくお願いします。
それと、さわらび幼稚園の宣伝になりましたね。
来年は、きっと応募者が増えるかもね。ハハハハ」

先生に礼を言われ、桜田さんは、ただ黙ってコックリコックリしていました。

その瞳には、冷たく硬い空にも、色とりどりの花が咲き乱れる様が映っていました。



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