笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER
「いやぁ,阿野さんは、やっぱり凄いな」

「エッ、どうしたって?」

「いやね、おととしだったかな。奥さんを病気で亡くしたろ。そのあとのことさ」

「気の毒にな。それで?」

「うん、あの年だから、普通なら家に閉じこもってしまうところ、
なんとなんと、その反対の生き方してるんだ」


「なにしてるって?」

「まずな、今まで社長してた燃料販売会社を息子に譲ると、
それまでの仕事一筋の生き方から、趣味の生き方に全面転換したんだ」


「どうってことないな」

「あわてるな、まずな、カラオケだけじゃ物足らんと云うて、
女性ばかりのコーラスグループに入った」


「・・・・・・・」

「と、思ったら、もひとつ物足らんと云うて、
洋楽の個人レッスンを受け始めた」


「・・・・・・・」

「と、思ったら、歌ってるだけでは物足らん云うて、
ピアノのレッスンを受け始めたんだ」


「えっ、あの歳でピアノ!」

「だろう。ワハハハハ。
そしたらな、歌の世界だけじゃ物足らん云うて、
今度は、花と緑の研究会に入って、
果樹やら、植木の手入れを専門的な勉強始めたんだ」


「ふーん。でも、なんか、コロコロ変えているだけじゃないか」

「ちがう、ちがう。
カラオケもコーラスも、洋楽もピアノも植木も、
ぜーーんぶ、続けているんだ」


「エーッ! それは凄いよ。
休む暇なんか無かろうし、よく体力続くなぁ」


「やっと判ったか」

「うん、こりゃあ、阿野さんは、一つの生き方見本みたいな人だな」

―――――――

<近頃、どこへ行っても、阿野さんは凄いですねって云われる・・・。
 だが、それは表面だけ見てるからだ。

 ほんとは、芳江が死んでしまって、今でも寂しくてたまらん。
 哀くてたまらんから、家でじっとして居られんのだ。

 気を紛らすために、必死にいろいろやってるだけなんだ。
 まあ、行く先々で親しい人も何人かできたから、
 この付き合いは大事にしたいが、家に戻れば、嫁が気を遣ってくれても、
 やっぱり芳江が居ないと、体が冷え冷えした感じになる。
 歳のせいで冷えになったのかもしれん。 ハハ。

 ともかく、毎日、あくせくとこんな事続けて、
 やがて天国で芳江に逢ったら、
 「なんですか、あなた、ムチャクチャ動きまわて!
 どうもごくろうさまでした。ここでは、どうぞ、ごゆっくり」って、
 笑ってくれるかな。
 そうだよな、オレの悲しみを理解してくれてる芳江が、
 天国で笑顔で見守ってくれてるから、オレは頑張れるんだ。
 単純なことよ。 ハハハハ >



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