笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER
・参加者は70歳以上に限定。
・市の公式行事。15ヶ所で同時開催。
・実行委員会は、大学生ボランテアで構成。
・後援は健康食品とシニアホームの関連企業。
・場所は幼稚園の運動場。
・イベントは、実行委員会が考え出した新しいゲームや軽スポーツ。

この地域では15人が集まりました。付き添いは、いません。
参加者は、なんでも一人でやれることが条件になっているからです。

ポッカリ白い雲の浮かんだ青空の下で、3時間のイベントは終わりました。

「さすがに75歳は若いね。
わしは85歳だし、あんたのようにはいかんかったなァ。アハハハ」


「フーッ。少し頑張り過ぎましたよ。
帰りにマッサージに寄らないとどうにもなりませんよ。
ハハハハ」


「みなさーん。お疲れ様でーす。
お食事の用意ができましたから、食堂にお集まりください」


ゾロゾロ ストン ストン

おもいおもいに、適当な場所で腰を下ろすと、孫ぐらいの女子学生が、
ワインとビールとおつまみのセットを配って歩きます。

この時ばかりは、みんな、目の前の細くしなやかな指と、
自分の貫禄皺いっぱいの指を見比べて、
過ぎ去った年月の長さを改めて感じ入っているようでした。

市の担当者の挨拶と乾杯で、賑やかに食事会が始まりました。
ゆっくりと、でも、どこかぎごちなく食べ物を口に運びながらの話題は、
病気や孫が多くて、それでもお互いの細かい気配りを感じさせる食事風景でした。

やがて、全員の食事が終わると、実行委員のリーダーが、つと、立ち上がりました。

「みなさん、本日は、本当にありがとうございました。
ここにいらっしゃるような元気な皆様が、地域のご高齢者を元気づけ、
一つのお手本にもなっているものと信じております。
私たちは、まだまだヒヨコに過ぎませんが、
これから、大先輩に負けないように頑張ってまいりますので、
どうぞよろしくお願い申し上げます」


「イヨーッ。今日はよくやった。お世話になりました。
ありがとうよ」


「ところで、ここで、本日の最高齢者の松中様に、
日頃お考えのことなど、お聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか」


パチパチパチパチ

「こげんなとこで話なんて、急に云われてもなあ・・・・。
何?、長生きできる食い物の話でもしろってか? 
うーん、そうじゃな、気を付けてると云えば、
とにかく野菜を沢山食べるようにしとるが・・。
それから肉や魚も多いな。ビフテキなんぞ大好物よ。
うーん、ほかに話すようなものは・・・。
まあ、みんなも一緒じゃろうが、いつでも楽観主義よ。
辛い事でも、必ずなんとかなると思っとる。
じゃがなあ、なんともならんのは、寿命だな。

おっと、思い出した! これは大事な事じゃから、
云っとかなきゃならんわな!」


なんだ なんだ シーン

「それはな、割り込み禁止っちゅうことよ。
フフフ、わかるか。
それはな、わしも94歳になって、
毎日が、焼き場の窯の前で、順番待ちしとるようなもんよ。アハハ。
それでな、みんなは、わしの行列に先回りして割り込んだらいかんのよ。
これだけは云っておきたい。
以上。おわり」


「オーッ! うれしいことを云ってくれるねェ」

「さすが松中さんですねェ。面白いお話ですね。
近所のお年寄りにも、この話を聞かせてあげましょう」


会場はにわかに活気づき、人生を卒業するのは、
はるか先の事と思っている学生達も、
この妙に説得力のある話に、何度もうなづいていました。

会場の盛り上がり加減では、そのうち町内に、
{焼き場の行列に割り込み禁止}の幟が立つかも。
そして、それを見た人々は、
わけもなく少し安心した気分になるかもしれませんね。
ハハハハハ。



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