笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER
笑・プラザ

「子守唄じゃないぞ。おまもりうただ。
聞いたことないって? 当たり前よ、オレの発明だ。
まっ、ひと言で云やあ、
オレの人生を支えてくれた魔法の唄のことよ。
全然判らんてか。 無理ないな。
ほんなら、ドーンと中身をみせてやろう。
よく聴けよ。キーボードの弾き語りで聴かせてやる。

♪♪ ラ ラ ラ 赤い花束 車に積んで〜〜〜〜〜〜〜〜♪♪
♪♪ キラキラ光れ空 キラキラ光れ海〜〜〜〜〜〜〜♪♪
♪♪ いまは もう秋 誰も〜〜〜 死にはしないと〜〜〜♪♪
♪♪ 窓の外に 雪が〜〜今年もいろいろありました〜〜♪♪

ざっとこんなもんだ。
ニヤニヤするな・・・。
なに? なんでこれが、お守り唄かって?
じゃあ、解説してやろう。

最初の曲は{春の歌}ってんだ。
いかにも明るく始まる気分にさせてくれるだろうが。

次は、{歌え あしたに向かって}っていう曲だ。
カーッと照りつける真夏の太陽のように、
命の躍動感が溢れてると思わんか?

三番目は、{だれもいない海}ってんだ。
孤独に耐えて、強く生き抜く姿に感動せんか?

最後は、{雪の窓辺で}ってんだ。
楽しい事や辛い事を綾なしながら、過ごした1年を振り返って、
よくやったと自分を労わる気持が滲んでいる。
さりげないが、いい歌だ。

だいぶ、真面目な顔になったが、もひとつピンと来ん顔してるな。
どうしてこんな歌が必要なのかってことだろうな。


こんな話を始めたのはな、お前が高校卒業を目前にして、
プロ野球選手になるか、進学するかで迷っているから、
親父のような目には遭わせたくないと思ってのことよ。
オレが、高校からプロ球団に入ってはみたものの、
6年でクビになったのは知ってるよな。
まあ、B級球団とはいえ、有名な先輩も何人かいた。
オレは、がむしゃらに頑張ったが、
3年も経つと、次々と後輩に追い抜かれて、
レギュラーポジションなんて、夢のまた夢になってしもうた。
プロ選手は、天才だけが生き延びられる世界だと悟ったんだ。

クビになって、ほとんど毎晩、ヤケ酒飲んでる時に、
いろいろ忠告してくれて、自分を取り戻させてくれたのが、お前の母さんだ。
母さんは、オレがしょっちゅう通っていた飲み屋の娘だが、ただ者ではないぞ。
すっごく頭がいいし、世間のこともよく知ってる。頼りになる人だぞ。

お互いに好きになって、目出度く結婚しようかっていう時に出された条件が、
オレは一度死んで、出直して欲しいということだった。
野球の夢なんぞさっぱりと捨てて、メシの食える仕事をしなさいっていうことだ。

結局、オレは、飲み屋経営を教わって、料理学校にも通って、
何とか一人前になり、今じゃ、少しは知られた料理店になることが出来た。
ここへ来るまでは、辛かったなあ。
何度、やめようかと思ってことか。

こんな時に、母さんは、歌で慰めてくれもした。
オレは、涙流しながら、その歌を聞いたもんだ。
そのいくつかの曲のうち、強く心を揺り動かしてくれた歌を、
春、夏、秋、冬ごとに、1曲ずつ選んで、メドレーにしたってわけよ。
それがさっきの歌だ。 今だって、時々、口ずさんでは、自分を元気づけてる。

これで、ぜーんぶ判ってくれたか。
今じゃ、我が家も少し豊かになったから、
ひょっとすると、お前も、世の中なんとかなるさって、
心のゆるみが出て来てるんかも知れんぞ。

甲子園に出たぐらいで、
誰もがプロ選手で通用するなんて甘いもんじゃないと思うよ。
まあ、オレの結論を言えば、お前は母さんに似て頭がいいし、
大学の経済学部にでも入って、世界の事もよく勉強してから、
そこで進路を決めたらどうや。
野球は、趣味でやる分にはいいけどな。
そのうち、お前のお守り唄を作ってやろうか。
そんなに遠慮するなよ。 ワハハハ 」



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