笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER
おれは、とにかく忙しい。忙しいのだ。
何に忙しいのかって?
それは、旦那と奥さんのためよ。

旦那はな、年をとっても、
あちこちで働きづくめだったんだが、
ここにきて、急に体が弱ったらしくて、
仕事から完全に離れて以来、
毎日、ごろごろしてる。

これが続くもんだから、奥さんも見かねて、
「あなた、時には散歩にでもいってらっしゃいよ。
そんなことしてたら、メタボじじいになりますよ」って、
何度も何度も説得している。

そうは云っても、奥さんは、
スイーツに目がないから、しっかり間食に励んで、
一足お先にメタボばあちゃんになってるんだけどな。
だから、旦那には説得力不足だな。
ごろごろ うたた寝が止まらない。
遂に、オレが見かねて立ち上がった!
ある日、旦那と奥さんのスニーカーを、
リビングまで咥えて持って来て、二人の目の前で、
スニーカーの周りを回って「ワン」、
又、回っては「ワン」を繰り返した。

これで、どうやらオレが云わんとすることが分かったらしく、
苦笑しながら、夫婦が、やっと散歩に出てくれた。

それからは、オレがしっかり管理するようになって、
なんとか続いている。

こんなことは、オレの忙しさのほんのちょっぴりした例に過ぎん。
むしろ、すごく忙しいなと感じるのは、
夫婦とのコミュニケーションに気を遣うということ。

なにせ、お互いに言葉が通じないから、
オレが率先して、気遣った行動を示さなきゃならん。

たとえば、二人とも、しょっちゅうメガネを置き忘れる。
それを探して、あっちへウロウロ、こっちへウロウロ。

ここはもう、オレの出番で、匂いを嗅ぎ嗅ぎ、ひょいと見つけてしまうし、
お客さんが来たら、誰よりも早く玄関に出迎えて、
歓迎のチンチンをして見せる。
分かってくれるか? こんなことが山ほどあるんだ。

それでも、この頃になると、
オレもなんとなく考え込むことが、多くなったな。

それはな、犬は人間の何倍も速く年を取るんだ。
これは、神様が決めたことだから、いたしかたない。

しかし、やがてはお互いに老老介護という事態になるだろうな。
すごく淋しいな・・・・・・

しかし、オレは決心したんだ!
オレがやるべきことは、二人を喜ばせ、元気づけ、安心させること。
これが、オレの使命よ。

だから、オレは最後の最後まで、たとえ死にかけていても、
ああ、この子は頑張ってるんだ、立派だ,いとおしくてたまらないって
思ってもらえるような一生を送りたい。
もう、迷いはないぞ。



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