笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER
「さあ、今日はとっても面白いお話をしますよ」

「先生! それなんですかあ」

「それはね、4匹の猫ちゃんのお話です。静かに聴いてね。
――お月様がとっても綺麗に輝いている晩でした。
もう、あの子もこの子もみんなぐっすり眠りこんでいました。
暖かーい柔らかな風が吹いて、木の葉も静かに揺れていました。

そこに住んでる仲良しの4匹の猫ちゃんも、体を寄せ合って眠っていましたが、
やがて静かに目を覚ましました」


「猫は大きな目をしてるよね」

「猫ちゃんの名前は、とても可愛くて、
みんなのアイドルになっているのがミーちゃん。
大きくて力も強いのがドラちゃん。
とてもひょうきんなチィちゃん。
おとなしくて、とっても賢いのがタマちゃん。

この猫ちゃんたちは、お互いに頷き合うと、
ミーちゃんとドラちゃんが、のぼる君のおうちの屋根に、スルスルと上がりました。
そのお隣のユミちゃんのお家の屋根にチィちゃんとタマちゃんが上がりました。
屋根のてっぺんから見るお月様は、とっても大きくて明るくて、
もう、ヒョイッと飛び上がればそこに行けそうでした。

〜〜じゃあ、今夜もいっしょに歌いましょう〜〜。

ミーチャンは抱えてきたギターをポロロンと鳴らしながら合図しました」


「エエッ! 猫がギター弾くの?!」

「ネエ、可愛いでしょうーー。でも、も少し静かに聴いててね。

ポロロン〜〜おーつきさーまー おほしさまー
ごーきーげーんいかがでーすーポロロンロンロン」


「キャー! 先生! むっちゃーおもしろーい。キャーキャー」

「ハハハハ。でしょう!
それでね、チィちゃんとタマちゃんはとっても優しい声で歌うんですけどね、
ドラちゃんは、いつでも ドリャホイ ドリャホイって掛け声かけて盛り上げるの」


「キャーキャーキャーキャーキャー! アハハハワハハハハハ」

教室はもう、ガンガンビンビン響きまくって、とにかく大騒ぎしまくり。

やっと落ち着いたころ、先生は一度メガネをはずして掛け直しました。
こんな風にする時は、いつも何か難しいことを言われるので、
みんなはちょっと緊張しました。

「お話はこれで終わりですが、そこでね、
これから皆さんにやってもらいたい事があります」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「それはね、先生の話をもとに、皆さんはいろいろと想像して、
絵を描いて欲しいんです。ここに大きな石膏画用紙がありますから、
ここに絵を描いて、彫刻刀で彫って、版画を作って欲しいんです」


「そんなあーー。 難しすぎまーす」

「だいじょうぶです。やり方は教えてあげます。
でも、皆さんがこの話をどんな絵にするかが大切なんです」


いろいろ騒いだ末に、なんとかみんなが制作にとりかかりました。
完成までには10日かけることになりました。
家で親が手助けしないように御願いもし、全部、学校で作ることになりました。
自主自立目指して、自分でやり遂げるというのが学校の方針です。
だから、結果よりも努力を重視しています。

その日の晩、カンちゃんがお母さんに報告すると、お母さんは目を丸くして、

「まあ、そりゃ大変ね。でも、自分でみんなやりなさいって言われたんでしょう」

「ウン。でも、どうしようかなあ」

「そうねえ。アニメの本を見て丸写しするんじゃ仕方ないしねーー。
猫ちゃんが難しいかもね。
じゃあね、お隣のミケちゃんはとってもおとなしいから、
その子をしっかり眺めて参考にしたらどう?
ギターは家に古いのがあるでしょ、お父さんに頼んで、
これを弾く格好してもらったらいいわね。フフフフ。 面白そう」


カンちゃんは、とにかく頑張りました。何枚も下絵を描きました。
それは、だんだん豚さんの顔から狸さんの顔に変り、
やっと猫さんの顔になりました。
歌に合わせて踊る姿も可愛らしくなってきました。

2ヵ月後に、学級参観があって、みんなの作品が貼り出されました。
とてもにぎやかで、どの作品も個性豊かで、見る人を強く引きつけました。
本当に、子供達の感性は豊かで、どこまでも輝いています。
カンちゃんの作品は、左にミーちゃんが目を細めて
うっとりした表情でギターを弾いて、その右ではドラちゃんが、
大きな目をあけて、横目でミーちゃんを見つめながら、
足を上げてドリャドリャ踊っています。
その口は赤く大きくて牙も見えるので、ちょっと怖そう。
でも、どっかノリノリの感じがあるのがすごい。
その後の方で、チィちゃんとタマちゃんが、
ヒョイヒョイと手足を振り上げています。

カンちゃんの作品は、多くの父兄の目を引いて、
だれもがニコニコと頷いていました。
お母さんは満足気にその近くに立っているとき、
横で佐伯君のお母さんが、ふっと独り言を漏らしました。

「猫ちゃんはいいわね。自由にどこでも行けるし、楽しめるし」

この一言に、カンちゃんのお母さんは、ぐっと胸を突かれました。
〜〜猫の絵を見て、毎日の介護の疲れや閉塞感を感じてしまうほど、苦労なさってるんだ。
すこしお気の毒。
これからは、こういう人がどんどん増えるだろうから、
この子供達も、きっと厳しい時代を生き抜かなければならないだろう〜〜。

「佐伯くーん。とっても面白い絵になったね。
ギターの周りで、猫ちゃんが電車ごっこしてるなんて、
みんな仲良しでいいよね。佐伯くん、すごいよ」


佐伯くんとお母さんの嬉しそうな顔を見ると、カンちゃんのお母さんは、
なぜか涙が出てきました。
あわてて窓の外に目をやり、校庭で元気に飛び回る子供達を見ながら、
これから世の中がどう変ろうと、
とにかく、毎日毎日頑張れば何とかなると自分に言い聞かせていました。



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