笑・プラザ


OKADA'S BACKNUMBER
「いい天気になったね。石垣君にも陽が当って輝いてるね」

「ウン、ちょっと長雨だったね。樫の木君は背が高いから、お日さんが気持ちいいだろ」

「それはいいんだけど。・・・ちょっと心配な事が出て来たんだよね」

「なに? それ」

「ボクは、ここで君と一緒に30年だろ。
高さが10メートル以上になって、重さも900キロあるんだって」


「うん、すごく立派になったね。
毎年、少しずつ重くなってるのは感じていたけどね。それでどうしたの?」


「ああ、石垣君には重たい思いをさせてごめんなさい。
実はそのことなんだけどね、これ以上ボクが大きくなって重くなったら、
きっと石垣君だって耐え切れなくなって、崩れてしまうかもしれないんだそうだよ」


「ヒャー! それは怖いね。どうしよう」

「そこでね、ボクを伐ることになったんだよ」

「そんなァ、そうなったら淋しすぎるよ。悲しいよ」

「アハハ。すこし落ち着いてよ。
あのね、ボクも君も、この傾斜地の土砂崩れを防ぐためにつくられたもんでしょう。
石垣君はしっかり基礎を守って、僕はしっかりした根を張って
土を固めるって役割を果たして来たわけとさ。
ところが、ボクの位置が悪かったんだね。
苗木の時は石垣君よりも斜面寄りにあったんだけど、少しずつ上からの土に押されて、
石垣君の真上で止まって、そのまま大きくなってしまったわけよ。
もちろん、根っこは斜面側に大きく広く伸びて地面を支えているから、
役割は果たせてるけど、体が大きくなって重いし、
もう限界かなってことになったんだね」



「フーン、やっぱり仕方ないことなのかなァ」

「まあね。でもね、斜面を守るには、ボクの根っこが貴重なのさ。
だから、まるまるボクを伐ってしまわないで、半分ぐらい残してくれるそうな。
これだったらボクも生き延びられるし、
残った枝から新しい枝や葉っぱを出すことが出来るよ」


「そこまで聞いたら安心したよ。どういったって、君とボクは長い付き合いだしね、
これからも助け合ってやって行きたいよね」


「そうお願いしますよ。こんなことになって、改めてボク達の宿命みたいなものを
考えたんだけどね、樹も石も人間から見たら、
ものを言わない便利なものとしか考えないかもしれないけど、
ボク達にしたら、何かの期待を込められるようになったら、
ただひたすらその役割を果たすという生き方になるよね。
これって、ボク達にとって、嬉しいことなのか悲しいことなのか。
ただ言えることは、ボク達を粗末にしたら、
それが度を過ぎれば、必ず悪いことが起るよね」


「そうだね、人間は、もっと自然に合わせて生きる知恵を持って欲しいよね。
少しずつ気が付いて来ているようだけど、まだまだ何十年以上もかかりそうだね。
ま、それまでは、ボク達はこの傾斜地を守って行こうよ」


「ここを通る人たちは、ボク達を見て、当たり前の見慣れた傾斜地だって見逃さずに、
一本の樫の樹が自然の林になって根っこで地面を支え、
石垣は自然の形で安定してるから、何事も無く毎日が過ごせてるんだって、
大きな自然の力に気が付いてくれたらうれしいね」




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