笑・プラザ ぜいたく


OKADA'S BACKNUMBER
「うさぎ追いし かの山〜」

「夕焼け小焼けで〜」

「ギンギンギラギラ夕日が沈む〜」

「わーらーべーは見―たーり〜」

「きらきらひかーれそら〜」・・・・

精一杯の声を張り上げ、夕焼けの琵琶湖に向かって歌い続ける4人。みんな昔美人。
湖畔に小さく突き出た堤防には、まわりに誰もいない。はるか頭上を二羽のとんびが舞っているだけ。
4人の合唱は、時には詰まり、時にはやり直したりして、気分良く続く。
仲良しグループは、今日、この近くの会員制ホテルにやって来た。ホテルは部屋も広いし、それなりの上質感もあって、サービスもきめ細かいので、みんなフンフンと納得できた。
4人は、ゆったりラウンジで、気ままに選べる飲み物サービスを楽しむうち、「今度のリクリェーションは、時間の贅沢を楽しみましょうか」という話になった。
なんてったって、ホテルを一歩外に出たら、広大な湖と、延々と続く湖岸の遊歩道と、それに沿った雑多な街路樹があるだけ。
都会的な娯楽施設なんか、なーんにも無い、浮世離れた別天地。時空の忘れ物といった雰囲気。とにかく、スケジュールに縛られない、ガツガツしない、いつの間にか何かが始まって、いつの間にか時間が過ぎる。これが時間の贅沢。こんなの、人生の達人でなければ出来ないような高級な(?)遊びに違いない。
だから、いつの間にか散歩に出て、いつの間にか堤防に出て、いつの間にか合唱になっただけ。
いい加減歌い疲れた頃、いつの間にか足元が暗くなり、鏡のような湖面を渡る風が冷たくなって来たが、あまりの静けさに、4人は、ただのシルエットになってしまったよう。
ふと、我に返った4人、


「なんか、おなかが空いちゃった。そろそろ戻って、ホテルの自慢料理をいただきましょうよ」 

「賛成 賛成」。

帰りの足は早い。食欲につられて、時間の贅沢も一時中止。

英国調の綺麗な庭園を見渡すレストランで、しゃれた料理を楽しみながら、4人の会話は果てしなく続く。子や孫のこと、健康のこと、ファッションのこと、お芝居や映画のこと、不景気のこと、年金のこと・・・・・・・。
中身は、決して高尚なものでもなく、どうってことのないものばかり。それにしても、よくもまあしゃべるしゃべる。
いつの間にか、レストランは4人だけになった。


「アラー、こんな時間。じゃあ、引揚げましょうか。温泉もあるし、展望室から見る夜景も、ライトアップで素晴らしいらしいし。あとは、各自、自由にして、明日また、元気にお会いしましょうよ」

あくる日もこんな調子だから、ちょっと雨が降ってきたというだけで外出は取りやめ。温泉に入ったり、ケーキを食べたり、館内のブティックで手ごろなショールを買ったりして半日が終わり。
こんな過ごし方を他人が見たら、なんとまあ退屈なことと思うかもしれない。
しかし、後になってみれば、こんな時間が鮮明に思い出されて、不思議と懐かしくなる。4人は、次回の予定を決めて、今回の贅沢時間遊びは終わった。
家に帰れば浮世の雑務も多い。体だっていつも万全とは言い難い。だが、心の奥では、


=なみだで老いを嘆くより 空に夢の字を書こう=

と、いつも思っている人たち。





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