笑プラザ


男二人。小料理屋の別室で、酒酌み交わしながら、
ぼやくでもなく、かといって、陽気に話すでもなく、
なんとなく、ここが落ち着くという雰囲気。
ひとりは、市会議員を子供に譲って引退した男。
もうひとりは、市の公営ごみ処理場が民営化されることになって、
利権がなくなってしまった男。

「あのな、シャッター通りの商店街とかけて、なんと解くか知っとるか」

「そんなこと知るもんか」

「閑散としてるだろうが。だからカンサンって解く」

「なーるほど。経済対策はうまく行かなかったしな。ちょっと深刻すぎるな」

「そりゃそうだが、しかしな、あの人は、最後まで土俵際の粘り腰がすごかったな。
 辞めろ辞めろって迫られたら、次から次に新しい法案を出してきて、
 いつ、けじめがつくのか、グジャグジャにして続投したよなあ」


「ほんとほんと。言うことは正しいし、誰も正面きって反対しにくいしな。
 しかしな、ウッヒヒ・・・。わしはこんな感じ持っとるんや」


「何を言いたい」

「まあ、一言で言えば、ありゃ普通に言う粘り腰とはちょっと違うな。
 得俵で反身になって、懸命にこらえているようには見えん」


「それがどうした」

「つまりな、カンサンは押されたらそのままずるずる下がってしまう。
 すると俵に足がかかるだろうが。
 そしたらな、あーら不思議。得俵がグニャーっと伸びて、足元が広くなる。
 それではと、今度は別の方角から押されたら、また、別の俵がグニャーって伸びる。
 まあ、こんな土俵を発明したのは、すごい発明家だな」


「うまいこと言うなあ。うん、イメージが湧いてきたがな。
 ところがな、土俵はそうでも、周りの観客は定位置で見とるんだろうが。
 そしたら、土俵が鼻先に来たり、向こうへ遠くなったりするよな」


「そこが問題よな。観客は国民だし、自分に身近に土俵が寄ってきて
 相撲がよく見えればいろいろ注文も付けやすいが、
 反対に、いつのまにか土俵が変わってしまって自分に縁遠い相撲になれば無関心になる。
 あんまり、土俵と一緒に動き回るのも信頼感が薄れるだろうなあ」


「まったくそう思うなあ。やっぱり、首相は横綱だし、
 土俵の真ん中で、でーんと構えていて欲しいよな」


「まあ、大きい話はこのぐらいにして、わしのとこだって、
 今じゃ、公営から民営に土俵が変わってしまった。新しい土俵で踊らにゃならんのよ」


「うん、かなり大変になるな。ライバルが増えるしな。入札だって厳しいよな」

「そこでな、さっきのカンサン流のやり方を参考にしたいと思っとるんや。
 それはな、今までのやり方や、いろんな関係を総洗いして、
 ほかに何かできる事ないかってみんなで考えることにしたんや。
 そしたら、少しだが出てきたんだなあ」


「ホウ、頑張るなあ。くじけんとこがお前のいいとこだな。
 うちの息子も議員3年目だし、出来ることは手伝わせるけどな」


「ありがとさん。細かいことはまだ言えんけどな、考えかたはな、
 今までは本業が安定していたんで、見過ごすか避けてきたような
 難しいことも取り上げるようにしたいんや。
 まあ、客があれば、小回り利かしてとにかく拾いまくるつもりよ」


「そうかあ、みんなのやる気次第だな。なんとか成功させなきゃならんよな。
 市の財政だって赤字だしな。もう、見て見ぬふりはできんよ。
 どんどこ情報公開して、つまり、土俵をよく見えるようにして、
 市民の力で改革したいもんよ。お互いに頑張ろうぜ」


改めて乾杯しなおし、肩を叩きあう二人。大きな政治や経済がどうあろうと、
生きる場を変えてでも、一人ひとりは生きなきゃならない。




▲このページのTOPへ