笑プラザ


「おとうさん、ちょっと相談に乗って欲しいの。 ア、これお土産のパイです」

「おう、早智子か。しばらくぶりだな。元気そうじゃないか」

「フフ、一応元気なんだけど、どんどん太っちゃって困るわ」

「相談って、やせる方法かい? そんなの知らんよ」

「そうじゃないの。実はね、勇太のことなのーー。
 もう何年も沖縄で、米軍基地問題の活動グループでやってるのよ。
 なんか、どんどん深入りしてるようで、
 いつ、こちらに戻れるか分からないって言うのよ。それでね」


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―――長い話でした。とても複雑な話でした。個人のレベルではどうしようもない話でした―――。

「うーむ。勇太も、退くか進むか、決断しなけりゃならん時のようだな。
 どんどん仕事が増えて、もはや政治家になりかかってる。
 このまま様子見ってわけにも行くまいが、
 そうだなあ、ともかく、自分達の小さな力ではどうにもならんようになったら、
 大きな力にすがるしかないだろうが」

「結局、どうするのがいいの」

「まあ、勇太にはやりたいことがいっぱいあるんだろうな。
 だから、とことんやらせてみたらどうかなあ。
 勇太は、もう、わしらの私物じゃなくなったって
 割り切らなきゃいかん時期に来たんだろうなあ」


「そんな立派な事言ったってーー。おなかを痛めたのはわたしよ」

「そりゃわかるがね。でも、どっかでスパッと頭を整理しておかなけりゃ、
 毎日フニャフニャ悩まなけりゃならんだろうがーー」


「―――――――――」

「参考までにな、わしは、毎年毎年、病気が増えて、怪我もするし、
 不愉快な事がどんどん増えてる。
 こんなんで長生きなんかしたくないって、何度も考えるよ。
 だがな、これも神仏の指図に違いないと考えたら、
 病気や怪我から逃げよう逃げようとするより、現実を全部取り込んで、
 これとつきあって行こうって気になったのも事実だ
 そしたらな、今日はちょっと調子がいいとか、
 痛みが少ないって時にゃ、素直に嬉しくなる。
 絶対に、故障は元通りにならんだろうが、
 神仏は、自然の回復力を与えてくださってる。
 だから、百点とはいい難いが、楽なったり直ったりもする。
 医者や薬はこれを助けてくれるしな。有難いことよ」


「そんなもんですかーー」

「言わせてもらえばな、勇太は今、どんどん経験積んで、大きくなろうとしてるんだ。
 お前は、それを誇りに思わなけりゃならんよ。
 だって、無気力な若者多いなかで、今の仕事は、誰でもやれることじゃないだろうが」


早智子さんは、なんかこじつけが多いような気がしましたが、
とにかく、神様や仏様の大きな手と運命に従って、
自分に与えられた力も信じて生きればいいのかなって理解しました。
でも、小さな勇太のあどけない笑顔や、ヨチヨチ歩きにみんなで拍手した日のこと。
夫がガンにかかって逝く日に、小学生になったばかりの勇太の手を握って、
大きくなるんだぞ、お母さんと仲良くするんだぞって、
涙を浮かべて語りかけた日などが思い返され、
もう、こみあげる涙が止まりませんでした。

――そうだ、勇太を訪ねて沖縄に行ってみよう。そこで、あらためて自分の心を決めよう!―――。




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