笑プラザ


あっつ 来たー!! もう何も見えない。体が石になった!

ウワーン ウワ〜ン〜〜〜
とどろく雷音の中から、澄み切った大音声が聞こえる。

〜〜〜五郎左よ、よく聞け〜。
お前の前身は、ソマリア沖にまで出かけて悪事の限りを尽くした海賊だ。
お前のために、何人も悲しい目、苦しい目に遭った。
ここで しっかり思い出して同じ苦しみを味わえ〜〜〜


雲とも影ともつかぬ大きな影が重苦しくのしかかり、五郎左は息もつけない有様。

ああ、自分は生まれるとすぐに、道端に捨てられたんだ。
泣き喚いている自分に野良犬が集まりだして、
バラバラに食い千切られそうになった時に、
丁度 通りかかった大男の権野助が、棍棒を振り回して助けてくれたんだ。


物心ついて周りを見たら、権野助の大きなあばら家には、
自分のような捨て子が何人もいた。
後で知ったが、権野助は表向きは船大工でも、
本業は瀬戸内を荒らし回る海賊の頭だった。
大人になったら海賊にしようと、あちこちから子供を集めていた。
そんな有様だから、子供の頃から、勉強など教えてもらえず、
盗みや密輸などの、海賊の予備役みたいなことばかりやらされていた。

しかし、自分が大人になる頃には、警察の取締りが厳しくなって、
日本では商売が出来なくなったから、海賊仲間と語らって、
権野助一家はソマリアに転進した。
ここは国境が入り組んでいて、逃げ隠れするには都合のいい所だった。

荒仕事を続けていたある日、近海の荷物運搬船に
貴金属が積み込まれたという情報を掴んで、
早速、夜中に訪問することになった。

まんまと舟を乗っ取ると、船員を数珠繋ぎに甲板に転がしておいて、
いつもどおりに手分けして船室を物色した。
奪ったお宝は権野助特製の袋に詰めて海面に投げ込む。
すぐにエアで膨らんで、下で待ち構えるボートがてきぱきと拾い上げる。
自分が航海長のキャビンに押し入ったとき、
隅っこの本棚の後ろで震えている男の子と女の子が目にとまった。
その瞬間、自分の捨て子時代が脳裏をよぎった。
きっと、この子供達が仲間に見つかったら、海賊の卵として拉致される。

これはいかん! そうだ、ここに隠れろ!

手にした斧で天井をブチ破り、二人をそこに放り込んだ。
仲間がドドドッと部屋の前を駆け抜けて行った。
めぼしいものを袋に放り込み始めたとき、けたたましく笛がわめいた。
武装警備艇が来るぞ! 至急離船しろ! という合図。
どうやら、この船は自動救援信号発信機を積んでいたらしい。

急いで甲板から海に飛び込もうとした時には、
警備艇は姿がはっきり見えるぐらい迫っていた。
しまった! 遅すぎたと思う暇もなく、猛烈な砲撃を受けて
権野助一家とボートはたちまち爆発炎上した。

〜〜〜お前は死んで、わしにすべてが委ねられた。
お前の前身の善行、悪行によって、何に姿を変えるかが決まる。
お前の罪状では、本来であれば、宇宙のチリになって無限空間をさまよい、
やがてブラックホールに吸引されるべきであったが、
最後に、幼い子供たちを救う善行をしたことに免じ、
再び命を与えてビーバーとする。
だが、お前がどこにいても、わしが親指を動かしたら、
前身の悪行を思い出し、反省しなければならない。1000回続くぞ。
そして、ビーバーとして仲間と一緒にダムを作り、
水面を広げて草花を育て、豊かな湿原をつくり、
ビーバーの子供を守り育てて、優しい心を取り戻すが良い。心して励め〜〜〜


偉大な影はスッと消え、雷声が静まると、石の体が元に戻り、
涼しげで軽やかな水音や小鳥のさえずりがよみがえった。

フーッ。いつものように気を失ってたんだな。
これで何百回になるかも。でも、まだまだ赦して頂けそうもない。
そうだ、噛み切った大枝を運ぶんだった。
これがなけりゃ、イザというときに家族が逃げ込む水中穴が仕上がらない。
頑張ろう。不思議だな、仲間と頑張ると、いつも気持ちがいい。
それにしても、この森には危険な動物もいっぱいいる。
いつでもまわりを注意して、襲われないように身構えてはいても、
たまには、水に逃げ込むのが遅れて食われてしまった仲間もいる。
ビーバーは岸に上がっても、水辺から20メーターが安全限界だから、
陸上の安全地域を広げるたためにも、子供たちのために、
おいしい水草が生えてくる水面を広げるためにも、
もっと働かなきゃならん。ビーバーで一生が終わったら、
次は何か考えて頂けるだろう
おお! こんな所においしい水草が茂ってる。子供たちを連れて来よう。





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