笑プラザ


「ああ、つらいなあ」

「オイオイ、いきなりのご挨拶だな。どうした?」

「今日で7日も出んのよ。苦しくてどうしていいか分からん」

「なーんだ、そんなことか。たった7日で騒いでるんか。オレなんか2ヶ月も出てないんだぞ」

「エエッ! そりゃいかん! お前死ぬぞ。早く医者へ行け」

「ウッ? 医者行ってどうする? なんか話がおかしいな」

「オレの言ってんのは便秘。出るモンが出んかったら、むっちゃ苦しい」

「ガッハッハッハッハー。そりゃ辛かろう。オレのは給料の話。
 会社傾いて出るモンが出ん。そうかといって、会社潰すにも金が要るとかで、
 なんにも出来ん。今は自宅待機ちゅう失業者」


「そうかあ、2ヶ月出なかったら生活苦しいよな」

「ああ、あっちこっち探し回ってるが全然ダメ」

「あのな、会社傾いたって話で思い出したことがある」

「フーン、なんか参考になるか?」

「ズーッと南に下がったとこに、八百屋があるだろ。
 店の名前は忘れたが、そこのヒロミちゃんって若い娘が凄い人気者らしい」


「それがどうした。凄い美人か?」

「そんな話じゃない。店が傾いてどうにもならん時に、
 ヒロミちゃんが救ったってはなしーー。
 話はこうだ。ヒロミちゃんは小さいときから歌が好きでな、
 手当たり次第に一日中歌ってたそうな。
 娘盛りになっても、店が店だからとにかく手伝わなけりゃってんで、
 働きながら客が居ない時は相変わらず歌ってたそうな」


「退屈だな、先を急いでくれ」

「そしたらな、近所の買い物おばさんたちが、時々耳にする歌に感心して、
 試しにリクエストしたらしい。そしたら、ヒロミちゃんは賢いなあ。
 じゃあ明日歌いますって約束して、伴奏テープ準備して演ったんだそうな」


「うん!そりゃいい考えだな、リクエストに何度も来てもらえるし」

「最初2、3人の冷やかしだったらしいが、そのうち、何人も集まるようになって、
 中にゃカラオケの新曲をタダで覚えるつもりで、何度もリクエストする奴も出て、
 今じゃ週3回のささやかな歌謡ショウになってるそうな」


「なんかうま過ぎる気もするが。一度見に行こか」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

二人がやって来た時、店には10人ほどが詰め掛けていて、
品選びしたり聴きいったりして、歌い終わると盛大な拍手を送っています。

「ナ、、はやってるだろ」

「うーん、長細い店だから、迷惑な音漏れが少ないなあ。
 ハハハ、りんごやバナナやトマトを盛り上げて、
 なんとなくステージのような雰囲気出してるのもうまいな。エプロン姿も可愛いな。
 オッ、次の曲か。聴かせてもらおうか。」


〜〜〜〜♪♪♪♪♪ 〜〜〜〜

「うーむ。なかなかのもんだな。声に透明感があるし膨らみもあるし、
 本格的だな。こんなとこでもったいないよな」


「ちょっと外へ出て話そう。---あのな、店からちょっとはずれたとこに、
 何とかいう作曲家がいて、奥さんに連れられてヒロミちゃんの歌を聴いたそうな。
 そしたら、これはモノになりそうだってことで、
 自前で作詞作曲のオリジナル曲をくれたんだ。
 今歌った、“そよ風のラブソング”って歌」


「お前、やたら詳しいな」

「まあ、町のことなら任せておけ。どんどん情報入ってくるんだが、出るモンが出ん。
 この歌がな、覚えやすいし、いい曲なんで結構人気があるってとこから、
 先生がヒロミちゃんのCD出そうってんで、来月だったかな、
 先生のルートで発売するんだそうな」


「おう! やるなあ、この裏町からスター誕生ってわけか。
 いいなあ、有名人が出たら、みんなの励みにもなるしな」


「まあ、お前んとこの会社にゃ関係ないが、
 こんな隅っこだって頑張ってるって思ったら、少しは元気になるかもな」


「そのとおりだ。前から考えとったが、
 会社の空き部屋や広場ももっと活用して欲しいなあ。
 例えばな、日曜日にカラオケや踊りの発表会に安い料金で貸し出すとかな。
 これで人が集まれば、取引き先にゃ農園もあるし、パン屋もある、
 米屋もある、けっこう大きなレストランもあるしな、
 今どうこうって結論出んけど、こういうとこと一緒になって
 毎日なんかやれたらいいよな。」


「おんや、ヒロミちゃん見たら競争心沸いたんか。いいねえ。
 会社で検討してもらったらいいかもな。元気だそうや」





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