笑プラザ


「なんてかわいい〜〜!」

「ありがとうございます。この子もやっと人見知りしなくなって、
 誰にも愛嬌振りまくようになったんですよ」


「ほーんと、こんなにきらきらした大きな目で見つめられたら、
 つい、抱きしめたくなりますよね」


「実はですね、この子は、生まれて間もなくほかの人に預けられましてね、
 そしたら、事情があって、また、ほかに預けられたんですよ」


「それはそれは! いろいろあったんでしょうけど、可哀想ですね」

「ええ、そのたんびに自分の扱いが変わるでしょう。
 すごくストレスもあったんでしょうねえ。
 だから、幼心に、人への警戒感や不信感がひどくなって、
 いつも隅っこに隠れるようになってたらしいんですよ。
 そんなんですから、うちに来る前の家で、
 ある日、薄暗くなってヨチヨチと外へ出てしまってたのに、
 誰も気が付かなかったらしいんです」


「エエッ! そんなあ!」

「結局、近所の人が、庭の側溝に落ちて鳴いているのを見つけてくれたんです。
 幸いに、落ち葉が沢山積もっていたので、どこにも怪我は無かったんですけど」


「なんか、無責任ですよねえ」

「そこは子どもがいなくて淋しいからって引き取ったようですけど、
 痴呆症の老人を介護していて、ヘルパーさんが引揚げたら、
 とても手がかかるようで、まあ仕方が無かったこともあるんでしょうけどね。
 そんなこんなで、うちに相談が舞い込んだってわけですよ」


「それにしてもねえ。こんな可愛い子なのに」

「ハハハハ、うちもどうしようかって悩みましたよ〜。
 こんな赤ん坊もいるし、お姉ちゃんは幼稚園だし、
 とても手が回りそうに無かったですからねえ。
 でも、このお姉ちゃんが、すごく熱心にせがむんです。
 自分が面倒見るからってまで言いましてね。
 やっとのことでパパを説得して、こんな風に、
 一日一回、みんなで散歩に出てるんですよ」


「それは、それはーー」

「預かってみると、やっぱり、人を信用しない癖がついてるんです。
 いつもよそよそしいし、食事や睡眠も落ち着かなくて
 もうひとつって感じでしたからねえ。
 でも、一生懸命話しかけて、撫でたりさすったりしているうちに、
 やっとわたしたちを信頼したようで、
 最近では、こちらが何か困ったような素振りを見せると、
 そばに来て、じっと目を見つめてくれるんです。
 そんな時はもう、思わず抱きしめて頬ずりしたり、撫でまくったり。
 もう、ムチャクチャ可愛いんですよ」


「生まれてすぐに苦労して育ったから、同情心が強いんでしょうか。
 わたしだって抱きしめたい」


「どうぞ、どうぞ。すっかり安心してますねーー。
 そうそう、こんなことも覚えてしまったんですよ。ワッハッハッハッ。
 なんとね、この赤ん坊がベッドで泣き出しますとね、
 さっとそのそばに来て一緒に鳴くんです。
 赤ちゃんの泣き声に上手に合せるんです。ハハハハ」


「泣き鳴き大合唱ですね。それは楽しいでしょうね。ハハハハ」

「そしたら、不思議なことに、この赤ん坊が泣き止むんです。
 誰かがあやしに来たって、勘違いしてるんでしょうかねえ」


「ワハハハ。すごく楽しい!」

木漏れ日の下、心地良いそよ風に身を任せながら、二人の会話は尽きそうもありません。
背中の赤ちゃんもスヤスヤ。
いま、優しい腕に抱かれて目を細めているのは、
ミニチュアダックスフンドのキューちゃんでした。



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