笑プラザ


「私なんか、もう追い詰められて、いつも懐にラストメッセージを入れてる有様」

「ラストメッセージ?」

「うん、家族への最後の手紙。
天国の入り口で待っているが、急いで来ちゃいけない。
ずーっと逞しく生き抜いて欲しいって書いてあるーー」

「・・・・・」 「・・・・・」 「・・・・・」

「こんな時勢だから、気持ちは分かるけど、元気ないし、早まってない?」

「いや、本心では、死ぬ気になって頑張ったら、
なんか出来るんじゃないかって思い詰めて、
自分でこの手紙を読み返しては、
こんなことしたらいかんって、自分を奮い立たせてるわけさ」

「それを聞いて安心したよ」

「そうだよね。さてと、今日の研究会は、
零細企業が自力で生き延びるために、必死で知恵を出し合おうって会だから、
自殺思考だって前向きに捉えて、がんがんいきましょうか」


「やろうやろう」

「ここにですね、発想のヒントにって、先生から宿題が出されています」

「先生の宿題は、いつも難解だね。それで?」

「読み上げます。――人間にとって、水と空気のどちらが大切か?――です」

「エーッ、なんだろね? それ。人間には、どっちも大切だと思うけどなあ」

「そうだねえ。当たり前すぎて考えようが無いなあ。どうする?」

「待った、待った!今、当たり前過ぎるって言われたんで、
なんかピンと来た。ウン、こんなことかも。
つまり、人間と水と空気との関係について、
当たり前として見過ごしてることを細かく見たら、
そこになんか出てくるっていうことじゃないかな」


「やあ、やあ、なんか分かってきたよ。
あのね、そりゃあどちらも大切なんだけど、
もし脱水でぐったりした人間なら、
空気より水が欲しい欲しいって、必死に求めるだろうし、
酸欠状態の人や溺れかけてる人なら、空気空気って必死になるだろう」

「そうだ! そうだよ! 我々は、人間って言われたら、
漠然とした人間のイメージで片付けてしまうよね。
おまけに、水も空気も絶対に必要だから、
どっちがなんてこと考えてもみないしね。
だから、先生は、当たり前に思われていることも、深く深く分析してみると、
何か新鮮な発見があるってことを言いたいんだろうね」


「いやあ、ひょっとすると、そのやり方で、
表向きは静かに見えても、徹底した分析力と切れ味鋭いやり方で、
高収益を上げてるところが絶対にある!」

「そうだよーー。じゃあ午後は、
本物のニーズを掘り出すための知恵絞りをしっかりやって、
我々の持ってるシーズとニーズがどう噛み合うか討論しよう」


研究会は深夜に及び、出てきたアイデアは300も。
しかし、みんなは分かっている。アイデアの成功率は2%ぐらい。
経営に貢献するのは2年後になる。
それまで、どう持ちこたえるか。
ここは仲間と事業のやりくりで、助けあってしのがなければーー。
それはそれとして、皆が集まって真剣に話し合えば、
これがなによりも命の栄養になって、崩れかけた心を支えてくれる。
なんとしても生き延びてやろう。

苦しい時こそ、めげずに頑張る人々に幸あれ。



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