笑プラザ


まず不運
冬晴れ 穏やかな陽に包まれ どこかへ出かけたくなる日
とりあえず 愛用のスポーツサイクルでルンルン出発
すぐに人影の無い住宅地に入り 静かな坂道をスイスイ下る
と 突然の向かい風 帽子がフワーリ はるか後ろへ

しまった! 思わず両手で急制動
普通なら指一本でも止まれる強力ブレーキを 無意識に3本の指で握り締め
車輪は完全ロックし 慣性の法則で体は飛び出し
続いて万有引力の法則で アスファルト道路に顔面から叩きつけられる

意識朦朧 立ち上がれず 右ひじビリビリ 眼鏡も飛んで視界はぼんやり
そのままのフリーズ状態

少し経つと 付近の住宅から2、3人がおそるおそる様子見に集まる
「だいじょうぶですか」 声をかけられても返事ができない
血だらけの顔に驚き、中の一人がケータイで救急車を手配してくださる

A病院の救急外科では顔面の深い傷を縫合
しかし唇の内側にも裂傷ありで困った ここには口腔外科無し
そこを探して救急病院のはしご
B病院に辿り着き 口腔内の止血と縫合 続いて整形外科でレントゲン
結果は残念ながら右肘関節の骨折
すぐ入院で2日後に手術と決まり 手術前の諸検査を済ませるがヘトヘト状態
 
手術前日には執刀医のR医師から詳しい説明
夫婦でハラハラしながら一生懸命に聴く
とにかく まな板の鯉と割り切って病室に戻る
顔の賑やかな絆創膏に唇の内と外の異物感 うっとうしい発熱でげんなり

続く不運
病室で気になる情報 執刀医のR医師は 隣国から来た研修医らしい
本国では外科の経験があるが 最新の手術法を学ぶためにB病院に来たようで
まだ2年の在籍とか
なんとなく嫌な気分の追い討ち しかしこの段階で医者の変更を頼み難い
半分諦めの境地 今晩眠れるか
 
手術前日には シャワーとシャンプーで全身を清めておいて欲しいとのこと
やっぱりここは病院であって、
介護施設のような おんぶに抱っこのケアは無いのだろう

不運のダメ押し
手術当日7時に 看護責任者が足早にベッドに来て 小声で
「すみません R先生が新型インフルエンザを発症したので
主治医が変わります 昨日の夜から発熱したようです」
 
「エエッ そりゃ大変 私たち夫婦も感染した可能性が高いですね!
手術後に熱が出たり あちこち痛んだりしたら区別しにくいだろうし
どうしたらいいんですか」

そこへ 急遽担当となったK医師がやってきて
「どうしますかね 10日ほど 感染したかどうか様子を見させていただいて
その後で手術する手もありますけど」

あれやこれやと仮定の話は疲れるばかり
新型インフルは不運の上塗りになるのか
 
好運の始まり

しかし こんなハプニングで
R医師からベテランのK医師への変更はラッキー
願っても無い好運と割り切って 今 発熱していなければ
運を天に任せて手術を強行しよう
「やってください」

手馴れたオペのお蔭で1時間半で終了 痛みはほとんど無し
その晩から 看護士が検温のつど
風邪の症状が出たら知らせてくださいと言うので これは要らざるストレス

続く好運

経過はすごく順調で 手術後4日で退院
退院の日にR医師が復職したようで ごめんなさいの挨拶
いえいえどういたしまして 自分達は感染しなかったようで
ウイルスにまで嫌われたのかもしれませんね

しかしギブスは吊り下げると首が痛いなあ 左手ではろくに歯も磨けないなあ
トイレの用足しはとにかく大仕事だが 一人でやり抜かなければ男がすたる
だが外出は 体のバランスが悪いのでしばらくは自宅軟禁

好運さらに好運

1週間経ったら口内の抜糸 2週間経ったら ギブスはずしと肘の抜糸
ギブスを切り裂くグラインダーが腕すれすれに動く恐怖感はちょっとしたもの
フーッと息ついて思わず右手をブランブランしたら K医師がちょっと驚いて
最初からこんなに手が動く患者見たことない
まるで子どものように治りが早いと感心してくれる

とにもかくにも 先生や皆さんのおかげ
そして家内殿のさりげない協力には 心底頭が下がる思い
特別なリハビリに通うでもなく あれこれ工夫しているうちに
右手は徐々に機能回復 やっと助かったなという気分

猛省の日々

とにかく軽率 バカの見本ここにありというほどのもの
一方で 故障人間になって感ずるのは 人様の見えざる力に助けられてる実感
そして、人様にお願いしたら 60点でよしとする割り切りと感謝の念
残り40点は 自分の根性で頑張って埋める
これからは 何があっても素直に受けとめて
人様の力を信じて頑張り続けられたら これが最上かな



▲このページのTOPへ