笑プラザ


「じゃあ、また、二年後にお会いしましょう。」
「う〜ん、会えたらね。」 「・・・・」 「・・・・」 「・・・・」


今回の大学同期の会は、喜寿慶祝を兼ねた一泊二日の催しで現地解散。
最後に深伊さんが、幹事三人の見送りを受けて、
付き添いの奥さんと一緒に旅館を後にしました。
三人は、いっぺんにがらんとした玄関ロビーに戻ると、
コーヒーでささやかな慰労会。

「お互いにご苦労さんでした。」

「ああ、やれやれ。」

「珍しく深伊君も出てくれたけど、奥さんもえらく気を遣ってたね。」

「そのことよ。深伊君は神経性の全身不全になってるらしいね。」

「うん、彼が、とにかく一人で居るのが怖いって言うんで、
 奥さんが、目が離せないって言ってたぐらいだからね。」


「今回はホントにビックリしたなあ。よく出てきてくれた。」

「それにしても、会えたらねって挨拶はすごくひっかかるなあ。」

「・・・・」 「・・・・」 「・・・・」
黙りこくった三人は、一様に強い不安を感じていました。

―― 深伊君は、虫の知らせで自分の先行きが不安になって、
    親友みんなの顔を見ておきたくなったんじゃなかろうか。――

「懇親会でも病気の話が多かったよなあ。
 誰だっけ、ここへ来る新幹線の中で胸が苦しくなって汗までかいたのに、
 そのままじっとしてたら収まったなんて、
 ぎょっとするようなこと言っとったなあ一。」


「奥さんが動けなくなって、長い療養に特別な食事が必要になったから、
 自分が料理の勉強して作って食べさせてるなんて泣かせるねぇ。」


―― 長い沈黙 ――


「ちょっと淋しいなあ。
 たまたま、今回のメイン行事は鵜飼い見物だったけど、
 なんか、今になったら、鵜飼い舟が篝火焚いて、
 目の前をスーッと通り過ぎたらそれで終わりって風景が、
 何かを象徴してるような気がしてきた。」


「それって、少し考えすぎかもな。」

「あのな、人間が、まあソロっと生まれてきて、年取ったら、
 ちやほやされて大人になったら、ワーッと働きまくって、
 なんとなくスーっと消える運命というイメージがダブルわけよ。」


「そりゃあ仕方ない、早いか遅いかの違いだけだ。」

「それにしても俺たち頑張ったなあ。
 お前は新幹線走らせたし、お前はでかいコンピュータ作ったし、
 俺は商事会社で手当たり次第に会社作って、大もうけしたし。」


「ハッハー、全部一人でやったようなこと言うなあ、
 会社も国も結束してやったから成功したんだろうが。」


「ホント、これはまあ、大げさな言い方かもしれんが、
 まさに、これまでは世界をリードする日本、
 でっかい夢にでっかい仕事の人生だったよなあー。
 今はどうだ、世界に埋もれてしまった日本、夢も仕事も無い現実。」


「とにかくスケールが小さくなったな。
 母校だって今頃になって、国立のおんぶに抱っこがあやしくなったら、
 いやいやながら 企業ににじり寄ってうろちょろしとる。
 もっと、デーンと構えて、
 いい意味で根幹を揺るがすような、研究や運営をやって欲しいよな。」


「そんな人間は、たちまち学内で浮き上がってしまって、
 結局干されてしまうんじゃないかな。
 とにかく大学の連中は変革を嫌うなあ。情けない。」


「だがな、今の若いもんの中にだって、ちらほらでも、頑張ってるもんもいるさ。
 いつだって、世の中を改革して前進させるのは異端扱いの若者と相場が決まってる。
 なにせ、生まれた時からパソコンがあって、ケータイがあって、
 電子辞書があって、英吾をしゃべって、
 大学の宿題やテキストはインターネットでやり取りする。
 とにかく知識だけでもグローバル化してるから、島国でひしめき合ってるより、
 世界で勝負するスケールが大きい連中もきっと居るだろうよ。」


「うん、埋もれた逸材もいつか芽を出すだろう。
 それを掘り出したり育てるのは日本人じゃでなくて、
 世界のどこかの人かも知れん。まあどっちでもいいから、それに期待したいな。」


「その通り。我々だって老人ぶってしょぼくれてるより、
 これからも夢を探してこれに向かうとしようか。
 これだな、諦めない、逃げない。最後の最後まで元気出して頑張る。」


「よっしゃ、その意気込みだ。」

「じゃあ二年後も元気で会おう。」

「頑張ろうぜ。」

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