笑プラザ


「マー!」 「フワー!」 「エー!」 「ヒャー」 「スッゴーイ!」
中高年女性の仲良し5人組が、桜楼台の高見にたどり着きました。
なんと、前も後も上も下も右も左も桜だらけ。桜の雲状態です。
仲良し組は、もう、興奮状態で、いつの間にか横一列に並んで、
「サクラ サクラ〜」の合唱を披露し始めました。
調子が出て来たので、続けて「オオ ひばり〜」。


「アレッ!」 「アッ!」 「エッ!」 「ハッ!」 「フッ!」
突然、足元から春風が巻き上がって、周りの枝をワサワサと揺るがせました。
同時に、みんなの目の前を何か黒い羽のようなものがフワーッと飛んで行き、
それは少し離れた草むらの中に落ちて見えなくなりました。

一瞬後、何事も無かったように静かさが戻りました、
−−−いや、待ってください、何事かがあったようです。
一番年長の御園さんが、頭に手を当てて慌てています。
顔は真っ赤で、今にも倒れそうなほど動揺しています。

みんなは一瞬にして悟りました。
飛んで行ったのは御園さんの“全頭かつら”だったこと。
それに御園さんには髪がほとんど無かったことも!

今までまったく知らなかった!
みんなは笑うどころか、気の毒がって、どうしていいか分からないでいると、
すぐに、気丈な御園さんが立ち直って、
「あ〜あ、ばれちゃったわね」と言いながら、
落ち着いて “かつら” を拾ってきました。

みんなはホッとして、
「見つかってよかったわ〜。わたしたちは飛ばされずに済んだだけよ」と口々に慰めました。
全員が、“部分かつら”の愛用者でした。
これがきっかけで、“かつら”談義が盛り上がって、わざわざはずして見せたり、
桜の花を“かつら”に飾ってみたりと騒ぎながら、
“アア、本当に心の通い合う優しいお友達ばかりでよかった”と、いまさらのように感じいりました。
お花見は大成功でした。

その晩、御園さんは夫と夕食を摂りながら、この話をしました。
静かに聴いていた夫は、フト、箸を休めると、

「すまないな、長い間、自分が病気ばっかりしていて、苦労をかけっぱなしだったしな。
そのせいで髪も若いうちから薄くなったんだろうし、申し訳ない」


「エッ! そんなことなんか考えてませんよ。
そりゃ、あなたは病気の百貨店みたいな人だったけど、わたしに心配かけまいと思って、
どんなに痛くて苦しいときでも、じっと耐えていたでしょう。
これで、どんなに勇気づけられたかしれませんよ。
お互い頑張って来れたんだし、いいじゃありませんか。
でもね、花見で、私、決心しました。
これまで薄毛を隠そう隠そうと思って、みなさんと宿泊旅行したって、
こっそり一人で風呂に入ったりして苦労したの。
二十年ぐらい、こんなだったでしょう。いい加減、疲れましたよ。
でも、もう、今日のハプニングで、隠す必要が無くなったって喜んでるんです。

髪は女の命だけど、かつらで第二の命が授かったようなもんです!元気モリモリよ。
なるようになるって割り切ったら怖いものなしでしょ。二人で頑張りましょうよ」

「女は強いよな、ホント。
なんかホッとしたよ。わかった。それで行こう」


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