困った夫婦が居るんです。
どちらも20年ちょっとしか人生やってないから、ちょっとしたことに舞い上がり、
イェーイ、イェーイで底抜けの楽天家。貧乏だって楽しくて仕方がない。

この間も、月末でお金が無かったらしく、昼食は一本のふかしサツマだけ。
これがまた、はしゃぎの材料になって、互いに2本の爪楊枝を持ちあうと、
ヨーイドンで早いもの勝ちの競争喰い。
そりゃあもう、食べるには随分と時間がかかるんで、お腹のほうが先に諦めてしまったらしく、
二人して大きなため息をついてお仕舞いになったとか。

内緒ですが、このやり方は、ダイエットにも使えそうじゃないですか。

そんな二人も、夢だけは、天を突くほど太く、大きいんです。
まず、オネエサン(奥さんよりオネエサンがピッタリ)は、いま、太極拳の先生やってるんです。
なんとか流の師範だとかーー。
6000円の月謝を取って、何十人も集めて、ビルの一室借りて一生懸命やっています。

生徒さんに聞いたら、先生は若くて美人だし、軽いノリの音楽バックに踊る(?)様子は、
なんとも色っぽいんだそうです。
二の腕がどうの、ウエストからヒップに流れる線がどうのって解説がつきましたが、
すこし場違いなので、ここでは省略しますけど。

しかしですね、これで、フーンと感心する仕掛けもあるんですよ。
それは、ちゃんと血流計を備えていましてね、指の毛細血管通して測るアレですよ。
太極拳の始めと終わりに計って、みんな、良くなった良くなったって、
ニンマリして帰ることになっているそうです。

そりゃ、体動かしゃ、血行よくなるでしょうがネェ。
それでも、なんか納得しやすいですがな。

そんなこんなで、オネエサンの夢はいま、大きく膨らんでるんです。
大きくても可愛い夢ですけどーー。

まずね、今の太極拳のやり方をしっかりした方式にまとめて、
自分流のブランドを確立したいんだそうです。
伝統的なら、サルの酔っ払いとか、鶴の首伸ばしとか、スタイルに名前がついていますけど、
もひとつしっくりこないらしくて、それぞれの型には、
変なスペイン語らしき名前をつけてやってますねェ。
そのうち、自分もカリスマ先生になって、テレビにもジャンジャン出たいってんです。

ほどほどにまじめで、ほどほどに華やかで、
乗り越える障害も多そうですが、やりがいもありそうですね。

次に、オニイサン(旦那より、主人よりオニイサンがぴったり)のほうです。
オニイサンは、イラストレーターの手先やったり、コピーライターの手先やったり、
ビデオ編集の手先やったり、雑誌記者やったり、やったりやったり人生を送ってきました。
だから、稼ぐほうはさっぱりで、オネエサンの稼ぎで飯食ってる印象ですね。

それでも根っからのロマンチストなので、いまだに、
末は一流の映画監督になるんだと言って憚りません。本気ですよ。

しかし、しかし、しかし。これで、フーンと感心するポイントを押さえているんですなァ。
こりゃ、ひょっとするとひょっとするかも。

そこで、それは何かと問われれば、ジャジャーン。
なんと、ペットシアター、アニマル劇場、動物俳優専門の映画監督!

映画には、人間はまったく出てきません。情感たっぷりに、動物の表情、しぐさ。
柔らかい音楽と最小限のナレーションに乗せて、ストーリーを形作ってゆく。
これなら、かなり自由に構想できるし、山場の展開も自由自在。

ここで面白いのは、すでにあるような、動物タレントの訓練されたしぐさに頼った
作品を離れて、普通の人の飼っているウサギでも猫でも犬でも、それに密着して、
日常の自然な動きを撮ることだけで仕上げようっていうんですから、
こりゃ、個人や家庭の思いをふんだんに取り入れた記録映画としても
成り立つんじゃありませんか?

ペットのホームドラマというプロの監督は、まだ少ないでしょうしね。
オニイサンは、今どうしてるってことですか?
いまですね、自分の飼い猫相手に、あれやこれやと修行中とか。
そうですね、無限の可能性と無限の失敗に溢れた道は遠く険しそうですけど

こんな若い夫婦。現代的で楽しそうですね。
まあ、二人の夢が形になって行ったら、
それを見るみんなも、きっと元気が出るでしょう。

エッ!! どこが困った夫婦なんかって? さっぱりわからんって?

失礼しました。二人の名前からそんな風に呼ばれているんですよ。

オニイサンは小松多次郎で、オネエサンは小松珠代です。
だから、コマッタジローさん、コマッタマヨさんって、
親しみをこめて呼ばれていますんです。ハイ。

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