![]() |
![]() |
-------二月・最終回ですが、つづきます/空気感 |
年明けの寒の内、小寒水泉動のころに京都でも雪景色になった。 雪の白さは日差しに反射してきらきらしている。 しんしんとした雪音は、日が昇り、次第に雪どけの音に変わってくる。 マンスリーホットラインの endless thema は129編となった。 他にworks が二編と建築家シリーズが三編とで 「人と自然と建築と」は134回の連載になった。 校友会設計同人の小冊子「れんじ」から書き始め、 今回マンスリーホットラインでは最終回となったが、 いつもと変わらず、毎回と同じ書き方でmessageとしたい。
京都宇治にある平等院の話はバックナンバー2014年12月号に鳳凰堂のこと、 そして2015年1月号でも少しふれ、 「 平等院には国宝の鳳凰堂の近くに 宝物館ミュージアム鳳翔館という建物が併設している。 鳳翔館は栗生明の設計で2001年の開館である。 生い茂る樹々で緑の多い境内であろうが、 異種の用途で異なるざわめきもあることだろう。 大半が地下にある建物で地階からのアプローチになり、 出口がグランドラインとなる。 まだ鳳翔館に訪れていないが古建築と洗練された モダンな鳳翔館との狭間にはどんな空気が流れているのか。 そして鳳翔館に導かれたエントランスに立ったとき、 そこから見える風景からは何が見えるのだろうか。」 と、書いた。
その鳳凰堂と鳳翔館との空気感を見てみたく拝観することにした。 昨年の木立がまだ黄紅葉のころ、 車で国道 24号線をひたすら南下し、門前の駐車場に車を止めた。 南にある門前からは、あじろぎの道を北に行き北側の表門から境内を散策し、 池を回り鳳凰堂正面をとおるアプローチが望ましかったのだが、 そのまま南門から入ってしまった。 視線の先には鳳翔館の地上部、つまり出口側にあたる。 右手に鳳翔館を見ながら伏見桃山城からの 移築といわれるアカガシで出来ている旧南門を入り、 境内西側から鳳翔館の入り口にたどり着いた。 確かに阿字池を介して浮かぶ鳳凰堂の風景とは違う空気感。 今から始まろうとしている静かな期待感である。 鳳翔館の正面の壁には視線の位置ほどのところに 「鳳 翔 館」の文字が取り付けられている。 近づくにつれ視線は壁に添って自ずと細長い廊下に導かれる。 常設展示の空間には、平安の伸びやかで巧みに造られた、 雲に乗る雲中供養菩薩像や一対の鳳凰が間直で見られる。
出口側グランドラインとなるミュージアムショップ周辺には、 リファレンスコーナーの設置や レストスペースなどの遊び心のある空間が設けられている。 大屋根の空間の下に設けられたレストスペースは アウトドアだがインドアのようにも感じ、そのファジーさは居心地がいい。 南側門前の府道への視線など当然のことだが配慮されている。 アーバンな感じと日本的とも思えるこの現代建築の空間は 暫しのやすらぎを覚えるような時が流れている。 そして「建築物は裏表をつくらず。」のとおり、 入口出口表裏問わず、高低差を利用し巧みに計画されている。 レストスペース廻りの空気感も然ることながら、 古建築と現代建築の狭間の微妙な空気感はmajor 7 の和音のようだ。 三音+1音で表現されるこの不思議で美しい和音のように、 そして majorとminorが共存したゆれうごく音の狭間で 互いに呼び合うような透明感があるように思えた。
次回からは、ホットラインさんにお世話になりブログで、 不定期にはなるだろうが続けていくことにした。 テーマは同じ「人と自然と建築と」。(http://nonobe.hatenablog.jp) 窓辺に置いたハゼの葉がやっと黄紅葉し始めた。 毎年ならとっくに落葉しているのに自然は不可思議であるが、正直でもある。 ロン・カーターのアルバム「THE GOLDEN STRIKER」を聞きながら、 温かいアールグレイでも煎れてひといきといったところか。 |
||||||||
▲このページのTOPへ |